臨床心理士がカウンセリングを受ける立場になって感じていること

臨床心理士(カウンセラー)は、カウンセリングを提供するお仕事です。

多くの人にとっては、臨床心理士がカウンセリングを受けるイメージは持ちづらいかなと思います。

そもそも、臨床心理士になろうと思う人の多くは、社会や心理的な問題で困り感を感じた経験をお持ちだと思います。全く困った事がない人やつまづいたことのない人は、心理領域に興味を持つことが少ないと思います。

社会は、不公平で理不尽なことが常です。そんな世の中で生きていると、どこかのタイミングでつまづきや困り事を感じます。多くの人は自己啓発本や一般人向けの心理系書籍を通して、心理領域に興味を持ち始めることになります。

臨床心理士は心理領域のプロフェッショナルですが、多くの人と同様に、社会での生きづらさを感じてきた人でもあります。心理学系の大学や大学院で、専門的なトレーニングを受けて、自分自身の問題についても向き合ってきた人と言えるかもしれません。

専門的なトレーニングを受けたからといって、自身の問題が解決するわけではありません。クライエントにカウンセリングを行う方法を学ぶのです。心理の指導教員から、個人の問題を含めて指導を受ける場合もあるにはあるのですが、多くはないと思います。

自分自身の問題に向き合ってはいるが、改善や解決できない人がより良いカウンセリングを行えるのでしょうか?

自分のことは棚に置いて、クライエントの問題解決を手伝えるのかと。

私の感覚としては、無理があるなと思います。やれるにはやれるのですが、どこかで不具合が起こると思います。

例えば

トラウマ治療で有名な専門家の本を読むと、著者自身がトラウマを持っているとカミングアウトしています。トラウマがあるからこそ、トラウマを持っている人の役に立てるように努力できるのです。

トラウマ体験のない人が、トラウマ治療をしているのを見ると私としては違和感を感じてしまいます。トラウマの苦しさを肌感覚で理解できるのかと。トラウマ治療は、特に専門性が高く、求められる資質、技能レベルも高いです。

良き治療者になるためには、自身の問題に向き合い、改善・解決することが人生のどこかで必要になります。その時に使うのが「教育分析」です。「臨床心理士が臨床心理士からカウンセリングを受ける」ことを言います。海外では、臨床心理士になるための必須トレーニングになっているのですが、日本では浸透していません。教育分析を受けない理由としては、個人のプライドや経済的な問題など色々あると思います。「教育分析を受けているんです」と、同僚に伝えても理解されないことがほぼほぼだと思います。薬物療法を受けていると言ったとしたら、なおさら理解されないでしょう。「ピアサポートだね」と軽くあしらわれると思います。もし、同僚にそのような人がいるなら、そういう人に関わってもメリットはないと思って、距離を空けるのが得策かと思います。

そんな状況の中、なぜ私が教育分析(カウンセリング)を受けるのかと。

・カウンセリングを提供している時に、共感・シンクロして自身もしんどくなる(トラウマ治療だと特に)。このことを共感性疲労とも言います。

・トラウマや問題が改善・解決した先の世界を肌感覚で知っておきたい。

・一人で問題に向き合うのは、とても辛いことなので、良き理解者が欲しい。

継続して教育分析を受けて思うことは

・カウンセリングを受ける人の思い、感覚が肌感覚で理解できる。

・基本自費で受けるので、カウンセリングで元を取ってやろうと真剣に思う(モチベーションが高く維持できる)。

・最近では、オンラインで受けられることも増えてきたので、カウンセラーを選ぶことができる。

⇒病院でカウンセリングを受けることもできるが、ガチャ要素が大きいこと、真の理解者にはなってもらえないだろうなと私は思ってしまうので、あえて自費を選んでいます。同業者にはやり辛いと聞いたこともあるので・・・。

・家族だからこそ、話せないことがあるので、教育分析の場で聞いてもらう。

・カウンセリングを受けようと決意した人の勇気・覚悟が実体験できる。

・トラウマ治療という専門的治療を受けることで、トラウマに向き合う辛さが理解できる。私は、この治療を受けている時に、号泣したこともあります。泣いてスッキリできた体験ですね。

これからカウンセラーを目指す人、トラウマを扱う治療者に、教育分析をおススメしたいと私は本当に思います。

カウンセリングを受けようかなと迷っている人は、勇気や覚悟が決まるまで悩んで良いと思います。良くなるために受けたいと思ったタイミングが一番かと思います。

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